33.右手の動かし方~平均奏法と平行奏法
マンドリンのレッスンや講習会での質問で「右手は手首から動かす方がよいのか、手首は固定して肘から先の腕を動かす方がよいのか?」ということをよく聞かれます。 「手首で弾くか? 肘から先の腕で弾くか?」ということですね。 ひとことでお答えするならば、「手首も腕も両方使います、場合によって。」 手首だけでもなく、腕だけでもない、しかし、手首だけのときもあるし、腕だけで弾くこともある、ということです。 私はレッスンでは基本的には肘から動かすように教えていますが、ある程度の手首の柔軟性も必要ですね。
私自身はどうかというと、自分では肘から動かしているつもりなのですが、手首のしなりもかなり入っているようです。
自分の弾き方は弾いているときは意外とわからないものです。 ビデオなどで撮影して、初めてわかることもあります。 右腕を見る角度が、上からと正面からでは異なるからなんですね。 ただ、人には体質というものがあるようです。マンドリンはもちろん、ギターやウクレレなどの弦楽器は全くの初心者で予備知識もないのに、手首からしか動かない人もいるし、手首が面白いようにガッチリ固定されて、肘からしか動かない人もいます。 ところで、マンドリンを弾く上で、右手の動かし方には大きく分けると2種類あります。 「平均奏法」と「平行奏法」といわれるものです。 ●平均奏法:手首を表面板に向けて曲げた形で、手首から先だけの振動で弾きます。 ダウン・アップの音量・音質の均一化(平均化)を図るための奏法で、俗に「扇子であおぐ要領で」といわれる弾き方ですね。
手首の曲げる角度は人によって様々なようです。 ●平行奏法:手首は表面板に向けては曲げずに、手首と腕からの振動で弾きます。 こちらも、ダウン・アップの音量・音質の均一化を図るための奏法ですが、ピックと手の平を表面板に対して出来るだけ平行に動かすので「平行奏法」と言います。 ときに「平衡奏法」と記してあるものも見かけますが、「平衡」は「つりあう」という意味なので誤字ですね。 もうひとつ、「片止奏法」といわれる、手首は平均奏法のように曲げて、ダウンだけは下の弦に当てて止める奏法もあります。 私は平行奏法で、基本的にはダウンもアップもピックを両側の弦に当てて止める弾き方をしていますし、レッスンでもそのように教えています(ただし、初心者にです)。トレモロも当然、同じような弾き方です。 ピッキングが速くなった連続音がトレモロですから。 これは、ピックの振り幅を一定の距離にして複弦2本とも同じように弾いて、音の粒を揃えるためです。 ただし、この両側にピックを当てる奏法は、移弦(弦移動のこと)が大変です。 ダウン・アップの連続で弾いているとき、移弦する直前のアップ(またはダウン)は隣の弦(例えば3弦D線から2弦A線に移る
場合、アップは4弦G線、ダウンなら2弦A線のこと)には当てないで移らないといけませんから。 一方の平均奏法は移弦に関しては楽だと思いますが、特にピッキングのとき(右手の動きがゆっくりのとき)に音の粒を揃えるのは難しそうですね。しかし、平均奏法でも素晴らしい演奏をする奏者も、もちろんいるわけですが。 マンドリンはいまだに地域性が強く、メソッドがきちんと確立していない楽器なので、いろんな奏法が混在しています。 一般的に、初心者のうちは教える人(先生や指導者)の弾き方(奏法)を踏襲するものなのでしょうが、どの奏法が優れているかというよりも、良い音や音楽を作り出していくためにはどういう奏法が必要なのか、教える側も、教わる側も考えることが大切なのかもしれません。